『学び合い』における気になる子に対しての効果について、
・三崎先生らの「理科授業における「気になる子」の『学び合い』の授業による変容に関する事例的研究」
・杵淵さんらの「「学び合い」に入れない子と教師の役割に関する一考察」
・佐々木さんらの「授業内に置ける「気になる子」への手立てに関する研究ー『学び合い』実践者と非実践者の比較を通してー」
の3本の研究論文を読みました。
杵淵さんらの研究、三崎先生らの研究では、対象となる子ども(=気になる子)は他の子どもたちの働きかけによって、学習に入ることができることが明らかになっています。
杵淵さんらの研究での対象となる子どもは、教師が何度声をかけても学習に取り掛からないどころか反抗的な態度も見られていました。
しかし、他の生徒が根気よく話しかけることによって、最後には学習の輪に入っていくようになりました。
理由を当人に聞くと、最初からその話しかけてくれた子どもの所に行きたかったと話をしたそうです。
子ども同士の関わり方の中で、天邪鬼な性格の当人が段々と心を開いていったんですね。
三崎先生らの研究では、対象の子どもが2人いました。
2人とも、授業中に認められない立ち歩きが多く、注意される回数も多い子どもでした。
しかし、実践を重ねていく内に
・相互的会話が多く現れる
・突っ伏す回数、注意される回数が減る
・周りの児童との意識的なかかわりが増加し、教えてあげる事が多くなった
・業者テストの成績が良好だった
・自分を受け入れてくれる環境によって、周りの児童に関わる意識が高まった
といった変容が見られたそうです。
上記の変容が起こった理由として、
・集団が自分の行動を受け入れてくれる安心感を感じた
・教えてあげる事の面白さを実感し、積極的に関わるようになった
・授業事態に対する心構えが変わった
・何回でも質問できる環境に適応した
等の理由が上げられています。
また、興味深いのは、教師から注意された回数が多かった単元では成績が上がらなかったということです。
教師が子どものためと思って注意したのに、それが逆効果になっているなんて、、、。
これらは研究の成果なのでエビデンス、つまり科学的な根拠があるものなんですが、それでも子どもに教えない、子どもに活動を任せるといった事をするにはなかなか勇気がいる事だと思います。
ただ、これらに共感し、実践し、子どもたちの有能さを目の当たりにしているからこそ『学び合い』の実践者は子どもたちに任せることができるのだと思います。
佐々木さんらの論文でも、
「実践者が攻守に関わらず「気になる子」の周辺に働きかける手立てを講じるのは、子ども集団の可能性を実感し、子ども同士の関わりの中で課題を解決することの意義を実感しているからである」
と述べています。
子どもたちに任せる、という一歩を踏み出すのは大きな壁であると思いますが、そこを踏み出すことができればこれは大きな一歩になることは間違いありません。
気になる子がどうすればいいのか分からない・・・そういった方にこそこの研究経過を後ろ盾にして『学び合い』をぜひ実践していただき、子どもたちの有能さを実感していただきたいです。
それでも心配な方は、近くの実践者の方と繋がり、まずは支えてもらいながらやってみてはいかがでしょうか?