今日も、入山章栄さんの『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』を読んでの記事です。
トランザクティブ・メモリーってご存じですか?
トランザクティブ・メモリーとは、「組織の中の誰が何を知っているかを組織全体が知っている」ということです。
ここでポイントとなる所は「組織の中の情報を全員が共有している事」ではなく、「誰が、何を知っているか」という所です。
このトランザクティブ・メモリーが高い状態というのはつまり、組織としての記憶量が大きいという事になります。
会社の中で情報を共有しておくことが大事だという事も言われていますが、人間一人ひとりの記憶量には限界があります。多くの事を覚えれば覚えるほど他の事を覚える事ができなくなってしまいます。
しかし、「これに関連する情報はあいつが知ってるな」という状態にしておけばどうでしょうか?更に、その組織が多様な多様な人が集まっているとすればどうでしょうか?
組織としての記憶量を劇的にアップさせることができます。
このトランザクティブ・メモリーが高い企業は、いい業績を残しているということが研究でも明らかにされているそうです。
トランザクティブ・メモリーを高めるには顔を突き合わせてのコミュニケーションが必要になるそうです。
カップルに共同作業をしてもらう実験で
①顔を見ずに電話だけでコミュニケーションをとる
②顔を見て文通だけでコミュニケーションをとる
③顔を見て会話もできる
の3つに分けた実験があります。
この中で一番パフォーマンスが低かったカップルは①のカップルだったそうです。また、②のカップルと③のカップルのパフォーマンスは変わらなかったそうです。
この結果を見て研究者であるホリングスヘッドさんは、アイコンタクトや顔の表情を通じてのコミュニケーションがトランザクティブ・メモリーを高める事を主張しました。
皆さんの職場や所属している集団では、顔を突き合わせてのコミュニケーションは取れていますか?
例えば、最近では喫煙所が無くなってきていますが、喫煙所で部署とか関係なく一緒の会社の人と顔を突き合わせて会話をすることって、このトランザクティブ・メモリーを高めるのには非常に有効な事でした。
僕の職場にはお茶のみ場があって、そこで休憩しながら同僚の先生とお話をさせていただくことが結構あるのですが、あそこの場があるからこそ仕事で困ったときに誰に、何を頼んだらいいかということがすぐに出てくるんだと思います。
普段から顔を突き合わせてコミュニケーションをとることは、組織のトランザクティブ・メモリーを高め、企業の業績にも大きく関わってきます。
最近では同じ部屋にいるのにパーテーションで仕切られ、メッセージで連絡をとるといった会社もありますが、それではお互いの事を知ることはできませんよね。
やはり、普段から積極的にコミュニケーションを取ることは非常に大切な事のようですね。
最近ではオンラインミーティングで遠隔でも顔を見ながら話をすることができますが、今後はそういった状況でもトランザクティブ・メモリーは向上するのかといった研究も出てくるのでしょうか?