『偶キャリ 「偶然」からキャリアを作った10人』という本を読んでいます。
先日、西川先生に「将来の夢とかやりたいことって、どうやって見つけるものなんですか?」と質問すると、この「偶キャリ」という言葉を紹介されました。
「偶キャリ」とは名前の通り、偶然からキャリアをつくる事を言います。キャリアデザイナーとかキャリアプランナーとかそういった仕事もありますが、この考え方はキャリアをデザインしたりプランしたりしません。
え、それでいいの?と思うかもしれませんが、学校のキャリア教育では、
いい高校や大学に進学する→ついでに役立ちそうな資格も取っておく(英検とか漢検とかTOEICとか・・・)→いい企業に進む→高い年収をもらう
ってのがスタンダードなものだと思います。まぁ最後の「高い年収をもらう」に関しては「やりたい職業につく」とかそういった表現になっているかもしれませんが、だいたいこんな感じだと思います。
その最終目標である「いい企業に進む」や「やりたい職業につく」に向かってプランを立てていくような指導が多いかなと思うのですが、正直中学校段階で自分の将来が決まっている子どもなんてなかなかいないと思います。
ただでさえ、義務教育の集団行動によって自分のやりたいこととか人と違う魅力とかを「みんなと一緒にできないの?」とそぎ落とされているのに、そこでいきなり「やりたいことをその紙に書いて、そこに向かうために自分が何をしなければいけないかを考えてください」と言われてもなかなか難しいですよね。
実際に僕が教員になった理由だって、
プロ野球選手になりたい→高校で挫折→スポーツトレーナーになりたい→中京大学にの受験に落ちる→たまたま推薦で行ける大学が保健体育の教員免許を取れるところだった→じゃあ教員でいいや→数学の免許も欲しい→大学院へ進学→教員ってすげぇ仕事!!!
って感じだったんですから、生徒に「やりたいことをみつけろ!」とはなかなか言いにくいです。
そこでこの偶キャリという考え方です。
この考え方は、スタンフォード大学のクランボルツ教授らによって提唱された「Planned Happenstance」という理論に基づいたもので、「Planned Happenstance」とは
①職業生活(あるいは人生も)は、実は「たまたま」や「偶然」の出来事や出会いなどによって決まっていくことが多い
②しかし、その「たまたま」や「偶然」は、本人がそれとは意識しないで行っていたことによって生じている
というものです。
振り返ってみれば僕のキャリアもこの「Planned Happenstance」によって作り上げられてきたなと感じます。だってもともと目指していたプロ野球選手という目標が、挫折しただの受験に落ちただのでいつのまにか教員になっているんですから。
ただ、この偶キャリというのは「行き当たりばったり」とは明確な違いがあり、行き当たりばったりとはただ待っている状態、つまり受け身です。ただ待っているだけでは偶然をキャッチすることはできません。
偶然を手に入れられる人は、自分の人生において有益な情報を掴みに行ったり、自分のワクワクする方に積極的に進んでいる。その結果、「偶然」が「必然」に変わります。
偶然キャリアを見つけた榎本英剛さんは
・本当にやりたければなんとかなる
・偶然を起こすためには、まず自分の心の針に敏感になることが重要
・そのやりたいことを周囲に言い続ける
・心の針が振れたら、それをやってみる、そこに行ってみるなどの行動を起こす
と言っています。
もちろん、キャリアというものの中でこの偶キャリは1つの考え方に過ぎませんが、間違いなくこどもの幸せな将来に向けて僕らがどういった指導をするべきかの指標にはなると思います。
一昔前はいい企業に入って仕事をしていっぱいお金をもらって・・・というのが理想だったのかもしれませんが、その人たちも結局「滅私奉公」の人生を送り、決して幸せと呼べる状態じゃなかったかもしれません。
その上最近はお金というものの価値が下がり、いい企業に就職することの価値も段々と下がってきているように思います。
それよりも、自分の人生においてワクワクすることを積極的に、つまり「偶然」を積極的に掴みに行き、自分が楽しいと思えるような仕事に就いた方が子どもの幸せにつながると僕は思います。
そもそもキャリアに正解なんてありません。一昔前は、「いい高校に進んで→・・・→いい企業に就職する」というのが正解だったのかもしれませんが、こんな不安定な世の中で正解なんてあるはずもありません。しかし僕らは生徒にそれを強要してしまいがちです。
人生をどのように考えるか。本書は以下の二つに分けています。
A.人生とは厳しい競争を勝ち抜くものであり、ある種の「戦い」である
B.人生とはそもそも楽しいものであり、生きていること自体に意味がある
みなさんはどちらと考えますか?
もしキャリア教育や、キャリアというものに悩んでいる方がいらっしゃいましたら、この本はそのヒントになると思いますので、1度読んでみてください。