今日は、西川研究室のOGである深山さんと西川先生の共著についてです。
この本は「特別支援学級の子供のための」と書いていますが、全ての子どもに当てはまることもたくさん書いてあります。
このシリーズの本はたくさん出ていますが、シリーズの中でもこの本は僕が一番推している本です。
この本に書いてある印象的な事は、「企業が求めている能力と、学校が身に付けさせようとしている能力に大きなずれがある」ということです。
ちなみに、企業が求めている能力とは、「コミュニケーションが取れる」とか「基本的な挨拶ができる」とか「自分の気持ちや意見を相手に伝える事」だそうです。
これは障がい者であろうが健常者であろうが変わりません。
学校では、四則演算とか、源氏物語とか、跳び箱とか、そういったことについて教育しています。
できないことは、教科担任や担任の先生、特別支援の先生、介護員の先生などがサポートしてできるようにします。
ただ、そんな手厚い支援が子どもにとって一番大切である「自立」を妨げてしまっていることを僕ら教員は理解しなければいけません。
子どもができないことがあったとします。
優秀な先生であればあるほど、その子どもの困り感にすぐに気付くと思いますし、その対処法も優れていると思います。
しかし、学校を卒業した後の事を考えてください。
その子をいつも見取っていたその優秀な先生はいなくなってしまいます。
社会に出たとき、先生がその子を見取って困り感を解決していたため、その見取る人がいなくなったら誰もその子を見取れなくなります。
また、その先生の見取りを軸にして子どもは学校生活を送っていたため、自分でSOSを送ったり、自分の気持ちを相手に伝える能力が身についていない可能性が高いです。
そうなるとその子は社会で生き残れる可能性が低くなってしまいます。
特別支援専門の深山さん自身も、「支援すればするほど子どもの成長を妨げている」といった話を聞いた時、非常に憤りを感じたそうです。
自分がやってきたことを全否定されたような物ですから。
ただ、深山さんは自分の指導法に限界を感じ、子ども集団に任せる『学び合い』を実践してみた所、今まで主体的に何もしなかった子どもがいろんな子と協力して問題解決をする姿を見て感動されたそうです。
僕ら教員の仕事は、子どもが社会で生き残っていけるような能力を身に付けさせること、簡単に言えば子どもを大人にすることだと思います。
しかし、その目的を忘れ、目の前の課題にだけ焦点を当ててしまうと、子どもの自己判断の機会を奪い、成長を阻害してしまう事になってしまいます。
子どもに自己判断の機会をそのまま与え、人に伝える能力を鍛え、最終的に自立を目指す。
それが本来教育でやるべきことだと思います。
そんなことを、深山さんの本で再確認させていただくことができました。