体育では、「体育理論」という領域があります。
体育理論とは、保健体育の体育分野に当たるのですが、体育分野唯一の教室で行う領域です。
まぁ他の領域でも座学を取り入れたりはするのですが、体育理論でなかなか体育館で実技を行うことはありません。
何をするのかというと、スポーツとの関わりの多様性について学んだり、スポーツを安全に行うための対策を学んだり、スポーツという文化の働きを学んだりします。
今はちょうどオリンピックが開催されているため、タイムリーな領域でもあります。
体育理論では、「スポーツにおけるルールとマナー」についても扱います。
簡単に言うと
ルールとは、定められている規則や規範などの守らなければいけないもの
マナーとは、相手を思いやってする行動
って感じで区別できるのではないでしょうか?
体育理論では「スポーツにおける」とは言っていますが、スポーツが関わろうが関わらなかろうが、そこに変わりはありません。
ただ、ルールとマナーについて学ぶには、スポーツというものは実践を伴いながら学ぶことができるので、非常に適している教材だと思います。
ルールは、「なんでそんなルール守らなあかんねん」っていうルールがあったとしても、それを守らなければそこに参加することはできません。
職場ではスーツを着ないといけない、このアパートではペットを買ってはいけない、野球では白のグローブを使ってはいけない。
これらは全て誰かによって定められているルールであって、これらを守らなければその集団に参加することはできません。
マナーに関しては、別に守らなくてもその集団に参加することはできますが、守ればその集団にいやすくなりますし、守らなければその集団にいづらくなってしまいます。
挨拶をしましょうとか、箸をきれいに使いましょうとか、打席に入る前は審判さんに挨拶をしましょうとか。
マナーがちゃんとできている人って、人から好かれやすいんですよね。
だから職場でも挨拶ができる人はいろんな人に助けてもらえるし、箸の使い方がきれいな人はかっこよく見えるし、審判に挨拶できるチームは試合が有利になります。
道徳では、多くは教科書で与えられた題材を基に、生徒がルールやマナーについて考えるといったような授業が多いですが、学びながら実践するとなるとちょっと難しいのではないでしょうか?
「こんなときどうしますか?」という状況を現実ですぐに作り出すことはできません。
知識は、実体験が伴わないとそういう現場に遭遇してもなかなかすぐに引き出しから引っ張り出してこれるものにはなりません。
しかし、体育ではそれが可能です。
スポーツにはもちろんルールもありますし、マナーもあります。
教師が意識して生徒のルールとマナーについての様子をフィードバックすることで、ルールを守らないとどうなるのか、またマナーを守るとはどういうことなのか、それを実践を伴って学ぶことができます。
また、「ルールは守るものだ」という社会主義的な考え方ではなく、「ルールは自分たちで作るものだ」という民主主義的な考え方を育むことができます。
体育は公式戦でも何でもないため、自分たちの都合のいいようにルールを変更する事ができます。
全員の同意を得ながらルールを構築することによって、民主主義によってルールや集団を作っていく事を実践することができます。
教育基本法の第一条でも
「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」
とされています。
民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた国民を育成するのに最高な機会だと思いませんか?
体育の授業では、体力の向上とか技術の向上とか健康の保持増進とかそういったことがメインであることは間違いないのですが、結局教育は全て、教育基本法の第一条に向かっていかなければなりません。
実技教科だからこそできる「実践を伴った民主主義教育」や「実践を伴った道徳教育」の可能性を信じて、体育の授業をやっていこうと思います。